2005年頃だったか、知人にご馳走になった燻製が大変珍しく感激して、製法や燻製の歴史など教わったのがきっかけでした。
自分も燻製作りに挑戦してみようと思い、市販のスモーカーなど買いそろえて趣味はスタート。
燻製作りは前出の知人から教わる他、本やネットなどを参考にしてみたり、食べ歩きによって多くの燻製を食べる毎日。何度も何度も失敗はするものの、不思議と燻製づくりを嫌だとは思わなかった。むしろ、次こそはという想いでそれまで以上に燻製づくりにのめり込んでいったんです。

燻製作りを繰り返すうち、一つのことが分ってきた。
それは短時間で作れる燻製と長時間かけて作る燻製。
長時間かけて作る燻製は、時間が経過するほど“うま味”が増すこと。
燻製は15分ほどのスモークでも美味しくできる。
たとえばアウトドアで楽しむのにはフライパンとダンボール箱があれば簡単に薫香豊かな燻製が楽しめるが、これは日持ちせずすぐに食べなければならないのに比べ、時間をかけてスモークした製法のモノは数ヶ月経っても腐るどころか“うま味”が増すのです。
私はその不思議な製法と美味しさに深く感激した事を思い出します。

現在、私の作る燻製は時間と手間がかかるものの、その保存時間と熟成する“うま味”が最大の特徴でしょうね。。。
まあ、答えはまだまだ見つからないものの、それに挑戦している、という事なんです。
作った時よりも1ヶ月ほど経過した時のほうが断然“うま味”が増しています。
最初は趣味で作っていた燻製ですが、お友達に頼まれて作っているうちに、まあ口コミですね、それで知り合いを通じて多くの方々から依頼されるようになったんです。
妙乃燻上(みょうのくんじょう)は販売されてるんですか?なんで本格的な商売にしないんですか?って質問があります。


今では多くのファンが増えてきましたが、私の大切なライフワークにしたいから大量生産するつもりはありません。世の中の商売ってたくさん作ってたくさん売って儲ける事ばかり考えてるじゃないですか。そこには作り手の愛情とか想いが込められてないように感じるんですよね。
私は燻製を作って「美味しい!」、「初めて食べた!」なんて言葉を聞くのがほんとに嬉しくて、その一人一人から返ってくる一言に作り手としての幸せをいつまでも感じていたいので、そこは時間がかかってもどれだけ非効率でも、とことんやりたいんですよ。
まだまだ本当に満足する燻製は出来ないんですけど、徹夜してでも満足するまで心込めて作り込みたい、ってことですね。
子供を育てるみたいな感覚ですかね・・・。


燻製には早く作れる「温燻」と長時間かけて作る「冷燻」とに大きく分けられるのですが、私の製法は季節によって異なりますが、その中間とでも言っておきましょうか。厳密には複雑なんですけど。
長時間腐敗せず、「“うま味”が増す」といいましたが、素材の鮮度はもちろんですけど、漬け込みの後の乾燥が一番の問題になってきます。
湿度や気温や風の量によって様々に乾燥方法を変えます。
特に夜風は私にとって重要なんです。
それからスモークなんですけど、試行錯誤を繰り返すうちに、ウッドチップについても私は独自の扱い方を発見しました。
日持ちさせるには漬け込み(ソミュール液)に塩を多く入れるのが良いのですが、塩分の多い燻製は素材の味が死んでしまうんですよ。
それで、私の作る燻製は「酒飲みにはちょっと薄味」って言われる事もあるんですけど、それでいいと思ってます。
ですから「塩分はそれぞれで食べる時に調整してください」ってお願いしてます。
その良い例がサラダと一緒に食べること。
これはとってもお洒落だし、塩分の調整にも良い方法ですね。
ミネラルたっぷりの“美味しい塩”を置いて好みに合わせて使うのも良いです。


燻製の優れているところは、「手間いらず」ってわけです。
たとえばパーティーではホスト役は一緒に食事を楽しめないわけですよ。燻製だと、一度出したら最後まで皆さんで楽しめるのがいいんですよね。
それと、私の作る燻製は肉や魚だけではなくて、野菜やフルーツまで燻製にします。
素材のままの時より燻製にすると、素材の持つ甘味や素材特有の”うま味”を引き出せるんです。
ニンジンやゴボウなんて信じられないほどのもち味が分るんですよ。
子供たちに食べさせたいですね。
もう一つは食材の飾りつけです。
スモークされた綺麗な食材の色は野菜やフルーツ、肉や魚・・・。
多くの自然な色を目で見て楽しめる燻製は「豊かな食文化の創造」だと思っています。お皿の上の盛り付けも楽しんでもらいたいと思ってます。

とにかく、燻製は奥が深いです。
まだまだ私の挑戦は続くでしょう。

記:2011年8月18日
マダム清子の手作り燻製
津川清子

ジャパニスト13号に掲載